怖いけど惹きつけられちゃう絵本『ドアがあいて・・・』|石井講次の おすすめ絵本バンザイ
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怖いけど惹きつけられちゃう絵本『ドアがあいて・・・』

ドアがあいて…

『ドアがあいて・・・』
 作 エルンスト ヤンドゥル(Ernst Jandl)
 絵 ノルマン ユンゲ(Norman Junge)
 訳 斎藤 洋
 出版社 ほるぷ出版
 発行日 1999年2月20日
 対象年齢 2歳から
 評価 ★★★★

子供って怖い話もなんだかんだ好きですよね

 子供ってお化けや暗闇を怖がるので、怖い話って嫌いなんだと思っていました。

 怒り、恐怖、暴力的な描写など辛くなる話よりも、アンパンマンのような勇気、元気、希望のようなほんわか温かい話が好きなんだと思いこんでいました。

 実際、3歳になるウチの娘のピヨちゃんの反応を見ていいると違うんだな〜ってことが分かってきました。

 先日も「まだ早いかな?」と思いながらも、『もののけ姫』を見せてみると、眉間にシワを寄せながらジーっと見入っています。

 あまりにも眉間のシワが深いので、「他のにする?」と声をかけてテレビのリモコンを手に取ると「これがいいの。これ見たいの!」と強めの声で静止されました。終始心配そうな顔。時折、不安や怖さが強くなった時は母親に抱きついて乗り越え、なんとか最後まで見終わりました。

 少し放心状態?ちょっと疲れた様子のピヨちゃんに「怖かった?」ときくと、ウンと頷きました。「また見たい?」と続けて聞くと、ウンと頷きます。怖いけどまた見たいと思うんですね。

 宮崎駿さんが凄いのだとは思うのですが、怖いだけでなく、怖さのなかに隠れた奮闘とか希望とかの微かな光をちゃんと見ているんですかね?

 ジェイソンとかバッキバキのホラー映画とかはどうなんでしょうね?見せてみた時のピヨちゃんの反応は興味はありますが、私が見たくないんですよね。(実は私がホラー映画が嫌い。)

 けれどピヨちゃんの反応を観察していると、怖いから良い、怖くないから大丈夫とかではなく作品の質が大きく関わっているみたいですね。

 今回紹介する絵本『ドアがあいて・・・』も怖いけどとても魅力的なんです。

『ドアがあいて・・・』の製作陣

 この絵本、製作陣が豪華!

 著者のエルンスト ヤンドゥル(Ernst Jandl)はドイツ語圏で最も権威があるらしいゲオルク・ビューヒナー賞をはじめ数々の文学賞を受賞している吟遊詩人。

 絵を担当するのはノルマン ユンゲ(Norman Junge)。こちらもトロイスドルフ絵本賞やボローニャ・ラガッツィ賞など数多くの賞を受賞。映画化された絵本もあり、今回のおすすめ絵本も映画として構想され、映画用に描かれた絵が使われています。

 日本語訳はドイツ文学者でもあり児童文学作家でもある斎藤洋。『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞を受賞。(最近映画化もされましたね。)その他にも野間児童文芸賞など数多くの賞を受賞。

 一流の才能が結集されて出来上がった絵本なのです。だから怖いのに子供を惹きつける魅力のある作品に仕上がっているんですね。

 短い文章でシュールで怖くて、なのに魅力的。これは凄いことだと思う。

 元々音で遊ぶ面白い詩を創ってきた吟遊詩人のエルンスト ヤンドゥルがこの絵本のために描き下ろした文章はとても短い。リズミカルで言葉少ない文体、示唆に富み、読み手の想像を掻き立てる余白が多い。絵本の文章というよりも、まるで詩のようだ。

 ドイツ語の原作絵本(原作の題名は『fünfter sein』)の全文を一気に朗読した動画がこちら。

 リズミカルなライミングで音が踊るようです。言葉遊びのような文章で、情報量はとても少なく、この短いセンテンスだけではどんな話なのかちょっと分かりませんね。

 このリズミカルで楽しいけど、シュールな文章をノルマン ユンゲの絵が上手に世界観と物語を補完してくれて魅力ある絵本に仕上げてくれています。

 短い文章でシュールで怖い作品は数あれど、一歩間違えて訳の分からないものも多くありますよね。ただただ唐辛子を入れた辛いだけで美味しくない激辛カレーみたいな。けれど『ドアがあいて・・・』は辛いのに美味い!辛さがコクになっている美味しい激辛カレーなんです。

 そして斎藤洋さんが日本人の為に世界観を壊すこと無く日本語に翻訳してくれて私たちの手元に届けられているのです!

『ドアがあいて・・・』のあらすじ

 裸の電球が一つだけ吊り下げられた薄暗い待合室。電球の光は弱く部屋の中央をボンヤリと照らすのみ。閉じた診察室の扉の隙間から漏れる僅かな灯りの方が明るかった。
 待合室には椅子が5脚置かれ、患者が5人座っている。誰一人、口を開かず静かに座っている。重い沈黙が部屋を覆い、部屋の隅には暗闇が塵のように積もっている。

ドアが あいて、ひとり でてきた。
コトコトコトコト!

引用元:『ドアがあいて・・・』p4

 診察室の扉が大きく開き、診察室のドアから待合室の床に漏れた灯りが光のカーペットのようにまっすぐに伸びています。その光のカーペットの上をてんとう虫のオモチャがコトコトコトコトと歩いて出ていきました。

ひとり はいっていく。
カッターン、カッターン・・・・・・。

引用元:『ドアがあいて・・・』p6

 ぜんまい仕掛けのペンギンのオモチャがカッターン、カッターンと歪な音をたて、よろけるながら診察室の中へ入っていきました。

 ペンギンのオモチャが診察室に入り扉が締められます。診察室の灯りは扉に遮られ、重く息苦し空気と闇が待合室を満たしています。

よにんに なった。

引用元:『ドアがあいて・・・』p8

 順番に一人ずつ診察室に入ってゆき、最後にひとり、鼻の折れた木の人形が待合室に残されます。

 ひとりっきりで待つ待合室は心なしか、更に真っ暗で寂しく感じます。寂しさと不安で涙がこぼれます。

ドアが あいて、ひとり でてきた。 パピョーーーン!

引用元:『ドアがあいて・・・』p28

ぼくの ばんだ。

引用元:『ドアがあいて・・・』p30

 鼻の折れた木の人形は椅子から被っていた帽子を手に取り、立ち上がり診察室に向かいします。壊れているのか、不安な気持ちのせいなのか腰が引け足取りは重く不自然です。

 そしてドアの前までたどり着き、診察室を恐る恐る覗いてみると、明るい寝室室の中で眼鏡をかけた太っちょの先生が優しく微笑んでいました。

やさしそうな せんせいで よかった・・・・・・。
「こんにちは せんせい。」

引用元:『ドアがあいて・・・』p32

 おしまい

ウチの娘のピヨちゃんの反応

 今回のおすすめ絵本を読み聞かせていと、やはり難しそうな顔をして絵本に見入っています。

 膝の上にピヨちゃんを乗せて読み聞かせているときなどは、体に少し力が入って緊張しているのも伝わってきます。

 そして最後のページ。優しい先生に出会った所でピヨちゃんの体の力も抜けて、顔の表情も和らいで満足そうな雰囲気が溢れます。

 全体的に覆っている怖い雰囲気が最後に訪れる安堵、幸せな感じをより際立たせてくれています。まるで、真っ暗な空でキラキラと輝く小さな星の美しさを教えてくれる。そんな絵本です。

ドアがあいて…
エルンスト ヤンドゥル
ほるぷ出版

 短い文章でシュールで怖い。なのに、いやだからこそ魅力的で素晴らしい『ドアがあいて・・・』。おすすめです!

バンザイ

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