数多の賞を受賞した動物絵本シリーズの一冊『かれえだ』|石井講次の おすすめ絵本バンザイ
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数多の賞を受賞した動物絵本シリーズの一冊『かれえだ』

『かれえだ』
 絵と文 吉田 遠志
 出版社 福武書店
 発行日 1993年12月6日
 対象年齢 2歳から
 評価 ★★★

幼児の読み取り能力の高さに驚く

 先日、探偵ナイトスクープを観ていました。
 観ていた依頼内容はこれ。

『私は小林可夢偉より速い!』探偵/石田 靖

 

大阪府の主婦(32)から。私は2年前から主婦業のかたわら、レーシングカートのチームに所属し、日々カートの練習をしている。普段活動している「たからづかカートフィールド」は、F1で日本を代表するドライバー・小林可夢偉選手を輩出したところで、私はもちろん、ちびっこドライバーたちにとって可夢偉選手は憧れの存在。実は去年、私はここでコースレコードを記録した。コースレコードとは「男女を問わず、過去のドライバーの中で一番早く1周を周る事ができた」という記録。カートを始めて2年。主婦業の合間を縫って練習してきた私にとって、とてもうれしい出来事だったが、ちびっこドライバーたちからは「小林可夢偉選手なら、コンマ2、3秒は余裕で速い」と言われてしまった。子どもが言ったこととはいえ、悔しかった。彼は子供時代にここで走ったが、今走ったら本当にコースレコードを記録した私より早いのか?探偵さんに調べて欲しい、というもの。

引用元:ABC朝日放送ホームページ『探偵ナイトスクープ』

 いや〜、面白かったです。依頼者の方が思いのほか速くてビックリしました。
 
 そして、依頼者と小林可夢偉さんがレースを観ている時でした。横でおもちゃで遊んでいた娘が頑張れ、頑張れって大きな声で手を叩きながらテレビ画面の中の二人を応援しはじめたのです。

 画面に応援する観客が写っているわけでもなく、小林可夢偉さんがブッチギリのレース展開だったので、明らかに競争しているように見えていた訳でもないのに、映像から二人がレースをしていることを読み取ったんですね。「ここまで理解できるようになったんだな。」と感慨深くなりました。

 絵本を読み聞かせている時にも「いったいどこまでストーリーを理解出来てるのかな?」と疑問に思ったり、娘がふと漏らした感想から、「こんなに理解出来てるんだな。」と感心することがよくあります。

 今回のおすすめ絵本『かれえだ』を読み聞かせている時もそうでした。



『かれえだ』のあらすじ

 水飲み場を求めて旅をしてきた、ひいおばあさんゾウと仲間たち。やっと、見つけた水飲み場も、ゾウたちの好きな木々は生えておらず、人間たちが象牙を奪うためにゾウ刈りを行う危険な場所でした。

 ひいおばあさんゾウと仲間たちは、住み慣れた森へ引き返すことにします。

 人間や自然の脅威を乗り越え進んでいくと、行き道で砂嵐に襲われた場所でひいおばあさんゾウの娘の遺骨を見つけます。

 ゾウたちは遺骨を抱え葬式の列をなし、住み慣れた森へ帰って行きます。

私を驚かせた娘の反応

 この絵本を初めて読み聞かせたのは娘が1歳のときでした。

 まだ、長いお話をじっと聞いているだけの集中力は無く、話を読み終わるのまで待てずに自分でドンドンページをめくっていきます。仕方がないので私は話をすっ飛ばし、めくられた新しいページの冒頭から読み始める。娘がまた待ちきれずに、ページを捲る。私は、新しいページの冒頭から読む、といった繰り返しで読み進めていました。

 そして、ひいおばあさんゾウの娘の遺骨を見つけ、亡くなったゾウのことを皆で思い出し、悲しんでいるページを開いた時です。娘が「エーン、エーンしてるね。」とゾウたちが泣いているねと言ったのです。

 今回のおすすめ絵本はすこし難しい話ですし、ところどころすっ飛ばして読んでいるので言葉からストーリーを理解するのは無理です。娘は絵を見て、どのような場面か?どのようなストーリーなのか?を読み取っていったのです。

絵でものを考える、理解する幼児時代

 東京こども図書館を設立し、沢山の子供に絵本のすばらしさを伝えてきた児童文学研究者の松岡 享子さんも

幼児の時代は、絵でものを考える時代です。

と仰られています。

(松岡享子さんは私の大好きな『こぐまのくまくん』を始め『くまのパディントンシリーズ』『ブルーナの絵本シリーズ』など多くの絵本を翻訳。またご自身でも『おふろだいすき』など素晴らしいお話を創作されています。)

 ある小学校で、三年生の子どもにさし絵についてたずねたところ、ほとんど全員が、本にはたくさん絵がついでいた方がいいと答え、その理由として、絵があれば読まなくてもお話 がだいたいわかるとか、文章でわからなかったところが絵を見るとわかるとか、登場人物の感じや気持がわかるとか、あとで人に話すとき、絵を思い出すとよく話せるとかいうことをあげたそうです。
 

 これらのことは、字を読むことをおぼえ、相当字に親しんでいる子どもでも、本を読んで内容をを理解したり、物語を自分の心の中で絵(映像)にしたりするのに、さし絵に頼っている部分がかなり大きいということを示しています。年齢が下になれ ばなるほど――つまり文宇になれないうちほど、この傾向は顕著で、文字をも たない幼児では、全面的に絵に頼る、つまり絵本によるしかないといいうことになります。

 このことは、私が娘に読み聞かせした実感としても納得のいくものでした。
 
 娘が0歳、1歳の頃から、今回のおすすめ絵本のようにすこし長く難しい絵本も読み聞かせてきました。まったく見向きもせず、途中で絵本を閉じてしまうものもあれば、自分でページをどんどんめくっていくもの、話をしっかり聞きながら読み進めるものもありました。娘は絵の力を借りで、いや絵を通して話を理解していたのだと松岡 享子さんの文章を読んで腑に落ちました。

 文章が難しくても、絵本に興味をしめし自分でページをめくっていく絵本は絵の力が素晴らしかったのだと思います。

吉田 遠志 渾身の動物絵本シリーズ


 今回のおすすめ絵本は、正に絵が大変素晴らしい。

 版画家、吉田 遠志さんが「自然や動物を愛する心は、幼いときから養われねばならない」という信念の元、アフリカへの旅、取材を重ねて木版画で創った『動物絵本シリーズ』は、まるで画集のようです。

 吉田 遠志さんの愛と技術が詰まった、厳しいながらも暖かいタッチの絵は、美しいアフリカの風景や動物を見事に表現されています。

 国際的にも大変評価されていて、『はじめてのかり』でボローニャ国際児童図書展エルバ特別賞、『あしおと』でフランス アミアン市文化交流賞、『まいご』で絵本にっぽん賞、サンケイ児童出版文化賞、国際オーナーリスト賞、『アフリカの動物絵本シリーズ』は、フランスで翻訳出版賞・異文化理解貢献賞を受賞しています。

 この絵本を読むと、小さいころ観たTV番組『野生の王国』を思い出します。動物の生態系について解説するドキュメンタリー番組です。1963年から1990年まで放送された番組なので、若いお父さん、お母さんは知らないかもしれませんね。

 ドキュメンタリー映像を専門家の解説するだけ。エンターテインメント性が少ない、とても堅い作りでした。しかしそ真面目な感じが、容赦なく弱い子供のヌーに襲いかかるライオン。ある時は、餌を捕らえられず飢えて弱ってくチーターなど、自然の厳しさ、生きていくことの困難さがダイレクトに伝わり、とても惹きつけられて毎週観ていました。

 『かれえだ』も悲しく、辛い話です。しかし、綿密な取材を元につくられた話と絵は、ただ悲しいだけでなく世界の理の一部を覗かせてくれ、何かを心に残してくれます。

 自然や動物を愛する心を培ってくれる『かれえだ』、おすすめです!

バンザイ

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